佐川 ちか
左川 ちか『左川ちか全集』への鴻巣 友季子の書評。硬質な詩語に打ち抜かれる左川ちかによる詩、散文、書簡、翻訳が全て収録され、年譜、解題、解説が付された初のコンプリート版である。これだけの仕事と校訂を編者ひとりで行っており、驚異的な労作だ。
左川ちか詩集 昆虫 昆虫が電流のやうな速度で繁殖した。 地殻の腫物をなめつくした。 美麗な衣裳を裏返して、都会の夜は女のやうに眠つた。 私はいま殻を乾す。 鱗のやうな皮膚は金属のやうに冷たいのである。 顔半面を塗りつぶしたこの秘密をたれもしつてはゐないのだ。 夜は、盗まれた表情を自由に廻転さす痣のある女を有頂天にする。 朝のパン 朝、私は窓から逃走する幾人もの友等を見る。 緑色の虫の誘惑。 果樹園では靴下をぬがされた女が殺される。 朝は果樹園のうし ろからシルクハツトをかぶつてついて来る。 緑色に印刷した新聞紙をかかへて。 つひに私も丘を降りなければならない。 街のカフエは美しい硝子の球体で麦色の液の中に男等の一群が溺死してゐる。 彼等の衣服が液の中にひろがる。
詩の極北に屹立する詩人・左川ちかの全貌がついに明らかになる──。 萩原朔太郎や西脇順三郎らに激賞された現代詩の先駆者、初の全集。 すべての詩・散文・書簡、翻訳を収録。 編者による充実の年譜・解題・解説を付す。 2022年4月下旬に全国書店にて発売。 ★試し読み 左川ちか「昆虫」「錆びたナイフ」「海の捨子」 解説「詩人左川ちかの肖像」より(島田龍) 【目次】 詩篇 一九三〇年 青い馬 昆虫 秋の写真 朝のパン 墜ちる海 一九三一年 出発 黒い空気 錆びたナイフ 雪が降つてゐる 緑の焰 青い球体 緑色の透視 死の髯 断片 ガラスの翼 季節のモノクル 一九三二年
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